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セカイの広さについて


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私のB級研究テーマのひとつに、「日本のサブカルチャーを相対化すること」がある。

子どもの心の成長を臨床的な眼差しで見つめていると、国語や算数の教科書よりも、コロコロコミックや少年ジャンプの影響の方が大きいのがわかる。何歳でどんな遊びをし、どんなヒーロー像を描いていたかということが学力やコミュニケーション力と大いに関係があるからだ。

小中学生を中心に人気の高い「sekai no owari(セカイノオワリ)」というバンドがある。街にも校内放送でも頻繁に流れて、嫌でもこのバンド名を耳にするようになり、そのメッセージとともに若者たちの熱狂ぶりにずいぶん驚かされた。「この現象はいったい何だろう」と興味を持ったが、同時に決して好きにはなれない壁や違和感を感じた。
 
「sekai no owari(セカイノオワリ)」のリーダーであるFukaseくんは、ADHDやパニック障害にも悩み、留学の失敗や人間関係の行き詰まりもあって、「自分にとって世界が終わったような生活を送っていた頃に、残されていたのが音楽と今の仲間だったので、終わりから始めてみよう」ということでこのバンド名にしたらしい。バンド仲間は全員お友達。共同生活をしながら、活動を続けているという。

日本のサブカルチャーの諸分野の類型のひとつを「セカイ系」と呼び、わりに否定的な評価も含めて語られているが、まさに彼らが命名したバンド名が「セカイノオワリ」であること、ファンが「セカオワ」などと略して普通に受け入れていることに、ちょっと恥ずかしいものを感じた。
 
セカイ系のセカイ観で描かれた物語は、アニメにせよ、ゲームにせよ、音楽にせよ、彼らが認識しているセカイの狭さに驚く。自分が属する小さな共同体以外にセカイなど存在しないのかのように、身勝手なことばを紡ぐ。彼らにとっては自分の居る場所がセカイの中心であり、そこで叫ぶ愛こそが何より大事なメッセージで、それを受け止めてくれる者だけが仲間なのだ。

私とは一生出会うこともない誰かをも包む壮大なバックグラウンドを世界というのである。今だけでなく、過去も未来も含めて世界である。それなのに極めて限られたごく身近な範囲のことしか知らず描けないのに、それを「セカイ」と名付け、始まりにも維持にも貢献せず、平気で「オワリ」ということばを使う。

自分の焦燥感や閉塞感を、世界の混沌とリンクさせて、「何もかも終わってしまえばいい」という諦観を持つ。

ある種の特殊能力とともに意にそぐわぬ使命を与えられ、激しく葛藤する。そこにキミとボクの2人だけの恋愛が絡み、滅びゆくセカイ、救済されるべきセカイは、単にキミとボクのラブストーリーのクサい背景として描かれる。こうした極めて幼稚な物語性にどっぷり浸かってしまえる貧困さを嘆かざるを得ないのだ。
 
リアルなセカイでの生きる力を考える上では、子どもたちが夢中になるサブカルチャーをしっかりウオッチングしておくことも大事だ。でも、何でも鵜呑みにして、子どもたちが好むものに理解を示すことで物解りのいいフリをする大人にはなりたくない。

とは言え、私はサブカルチャーが低俗でメインカルチャーのセカイが豊かだなどと思っているわけではないし、そこに歩み寄ってエラそうに理解を示そうなどと思っているわけでもない。この年齢になっても、私自身がサブカルチャーのささやかな担い手であり、クリエイターでもあると思っている。私が個人的に好きな漫画や映画や音楽が、文化史の中で必ずしも輝かしい評価を得ているわけではない。

それでも、美には評価の大小によらない見えない物差しがあり、それを丁寧に言語化することに意味があると信じている。

参院選に関わるTV番組で、党首がセカイのことをあれこれ語っていても、本当にこの人たちの頭の中には、幼稚なモデルしかないんだなあとしみじみわかる。彼らが国民というとき、誰と誰を思い浮べているのだろう。小学生が自分の欲しいものを「みんな持っている」というときの「みんな」ということばの方がちょっとリアリティーがある。

舛添さんのセコい金遣いこそが彼のセカイの範囲、子どもに買い与えたクレヨンしんちゃんの漫画が彼のセンスなのだ。彼がどんなサブカルチャーを味わっていたのかも興味がある。
by lastsalt | 2016-06-25 12:30 | Comments(0)