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国を憂えどすでに夕刻


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高校時代、私は三島の研ぎ澄まされた流麗な文体に魅せられた。しかし、彼の生い立ちや性格を知り、世界の歴史を学び、哲学を深めるうちに、滑稽ささえ漂うあまりに愚直な三島の姿に辟易とするようになった。

さらに時をおいて、距離をおいて、様々な文学を振り返った時、あらためて「神なしで神の領域に至ろうとした三島」にある種の特別な感情を持つに至っている。

三島は、「透明な林檎がその存在の核たる芯を確認する」為に腹を切ったのであるから、その死は政治的というわけでも、右翼的というわけでもない。純粋に自分の存在の意義を確認したかったのだ。

キリストの贖いを抜きにしてそれを擬似的に味わう為には、自らがキリストに似た者となる他はない。名声にも世俗の物欲にも満足しなかった三島は、空虚なことばで安直な物語を紡いでノーベル賞を欲しがる某人気作家などとはレベルが違うことは間違いない。

参院選によって「ねじれ」という最後のブレーキを失ったこの国は、亡国に向かって明らかに加速した。国を憂う者も少なく、破れ口に立ってとりなす者も稀である。

三島は腹を切って暴走列車に飛び込んだが、彼の肉が微塵となって見苦しく飛び散っただけで、何の効果もなかった。しかし、三島の賢いところはそのことさえ予め知り抜いていたことだ。そして、三島の愚かなところは、それを知りつつ別の方法を考えなかったことだ。

自分だけを養い、自分だけの為に生きようとする者には、三島の姿はバカにしか見えないだろう。しかし、三島は「元来、人間というのは自分の為だけに生きることなど出来ない」ということを知っていた。

国を憂えどすでに夕刻。黄昏れた空の向こう希望は見えない。水平線に没する太陽はもう二度と昇ることはないだろう。
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by lastsalt | 2013-07-24 14:28 | Comments(0)