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by lastsalt

とば


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「とば」といっても水族館のある鳥羽ではなく、家畜を処理する屠場である。大阪芦原橋まで、本橋成一の写真展「屠場」(とば)を見に行った。

「とじょう」ではなく。「とば」という読みにしたのは、「そこで働く人がそう呼んでいるからだ」と本橋氏はあるインタビューで語っていた。

私も奈良で実際に屠場を取材したことがあるので、本橋氏の写真についても、観る前からある程度のイメージはあったが、予想を大きく覆されたのは、働く人たちの笑顔が映し出されていたことだ。

ライフワークとしてずっと松原の屠場を撮り続けて来たというだけあって、被写体となられた方々との間の信頼関係を丁寧に紡いでこられたのがうかがえる。

後から調べてみると、本橋氏は今回の写真について、こんなことを語っているのを見つけた。

撮りたい写真を撮るには、「なぜ撮るのか」をしっかり伝えて、被写体との信頼関係を作らなければいけません。例えば、僕は屠場のナイフ使いの人に惚れ込んで、「ナイフ一本で牛をさばく様子が、本当に見事だ」ということを、何度も伝えました。そうすると、相手も「この人なら裏切らないだろう」と考えてくれるようになる。大手の新聞社の名刺でも持っていれば楽なのだけど、フリーの身ですからね。

屠場は長らく部落産業とされてきたので、メディアが触れてこなかった一種のタブーでもあった。今回、写真集を出すにあたてっても、出版元の平凡社には、「自分がすべての責任を持つから出させて欲しい」とかけ合って実現したと言う。

いのちをいただくといこと、罪を贖うために動物の血が流され続けてきたことの重さを、考えさせられる写真展であった。

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by lastsalt | 2011-07-31 19:31