写真を撮るようになって、少し目がよくなった気がする。それは、いろんなものが少しだけクリアに見えるようになったというような意味だ。
これまでは見過ごしていた場所や時間が、まるで違った表情に見え、深く記憶に刻まれてゆく。よそ見をしていれば見過ごしてしまいそうな、とても大事な一瞬にも、今までより多く立ち会えるようになった気がするし、目を向けることのなかったところも注意深く見るようになり、これまで気づかなかったこともいくつか発見できた。
「いい写真を撮りたい」と、少しは思うが、それは大して重要ではない。私の心に深く焼き付けられたものは、音楽やことばになって現れるかも知れない。それもどっちでもいい。私が見るべきものから目をそらさなかったという事実こそが大事なのだと思う。