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by lastsalt

おめでとう


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今年の卒業生の担任は、私が6年前に初任者指導を担当した4人のうちのひとり。初年度は4人の中で一番苦労した。「指導教官がついていながら、何でこんなことになるのか」と私まで非難する人もいた。でも、私は彼自身がその中で学ぶしかないと思った。私はあえて助けなかった。私が過度に介入してその場をおさめたとて、子どもにも彼にもいったい何が残っただろう。

当時は経験もスキルも乏しかった彼だが、ハートは一番よかった。彼の「逃げない」「飾らない」性格には好感が持てた。経験やスキルは後からついてくるが、ハートが駄目な奴はどうしようもない。彼にはのびしろが大いにあると思った。

教育の成果など、そんなに簡単に見えたり、語れたりするものではない。その時の4年生が今年中学を卒業して、彼を訪ねてきた。一番やんちゃで彼を悩ませたメンバーのひとりだ。「先生、あの頃はごめんな。何もわかってなかってん・・・」と語ったと言う。子どもとの関わりとはそんなものなのだ。その頃の彼は決して頼り甲斐のある立派な先生には見えなかったが、誠実な大人として、そのとき自分の持っている力を全部出し切って子どもと向かい合ったのだ。時を経て、子どもたちは実感としてそのことに気づく。

今年も彼は最後まで悩み続けて、最後の日を迎えていた。決して思ったようにやれたわけではない。でも、やりきった。巣立っていった子どもたちと巣を守り続けた担任に「おめでとう」のことばを送りたい。
by lastsalt | 2015-03-20 20:10