子どもたちの句集「春夏秋冬」が完成した。各自がそれぞれの季節の感動を五七五に読み込んだ。グループや学級全体で読み合って何度も推敲を重ねた。そして、せっかく出来上がった句にも、私は平気で何度もダメだしをして書き直させた。
これは子どもたちと私との格闘の記録でもある。子どもたちが使うことばの質が変われば、心も文化も変わる。集団の空気が変わる。ことばが豊かになれば暴力もいじめも激減する。そのことを私は経験から知っている。それは単に語彙が増えたり、大人びた表現を覚えて理屈っぽくなったりすることとは違う。あくまで自分の生きた経験と結びついた等身大のことばでないといけない。
大げさな飾ることばを覚えて誉められると、ごまかしのうまい嫌な子どもが要領よくズル賢い大人になるだけだ。俳句や短歌などの定型の短い詩の場合、学力の低い子でもホームランが打てる確率が高い。それがいい。言いたいことがスッキリ言えた嬉しさや誰かに伝わった喜びを経験することは、とてつもなく大切な経験だ。少しでもたくさんそういう感覚を味わって欲しい。
さいごまで楽しくがんばり抜いた子どもたちを誇りに思う。